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流れる雫はどこまでも透明なのに…あの人のようにキラキラと光っているのに。
それを流す自分がどこまでも、この空間のようにどす黒く、薄汚れた人間になってしまっていることが、悲しかった。
残されたものを守るためとは言え、こうして死んでしまって…守れたものと、未来を共に歩めない自分が恨めしかった。
弱かった自分が憎かった。
何よりも、こうして最期の最後に惨めに一人きりな自分が…情けなかった。
「三月さん…!どうして…俺はこんなにちっぽけなんですか…!」
どこまでも黒い、虚無の空間で俺は、心から叫んだ。
「どうして…こんなにも無様な負け犬なんですか…!」
今は亡きあの人へ、決して届きはしないSOSを発する。
「どうして…俺は…三月さんみたいに…なれなかったんですか…」
あの人が死んでから、流すことも無かった涙と一緒に、決して表に出さなかった弱い本音を垂れ流す。
ここには誰もいないのだ、一人ぼっちなんだ。
叫びながら俺は、少しずつどこまでも弱かったあの頃に戻りながら、思う。
死にたくない、死にたくなかった、生きたい、生きたかった。
「いやだ…一人は嫌だ、孤独は嫌だ、寂しいのは嫌だ、忘れられるのは嫌だ…」
先ほどまでの強がりなど、刹那の時ほども持たずに瓦解している。
守るために汚れながら感じていた寂しさが俺を苛む。
あの人が死んで、一月、二月も経てば笑顔を取り戻していた守るべき人達が、あの人を忘れたのと同じように俺を忘れてしまうことが恐い。
恐い、怖い、恐い…
散々人を殺した俺が恐いだとか生きたいだとか思うのは滑稽でしかない。
きっと、この地獄を創ったのであろう神様とやらも、泣きじゃくる俺をみてざまぁないと、そう笑っていることだろう。
けど…俺は我侭で子供なんだ…どうか、どうか今だけは泣くことを許して欲しい、叫ばせて欲しい。
こんなちっぽけで弱虫な俺でも、生きていたのだと、この真っ暗な世界で俺に教えて欲しい。
「う…ぐ、くそったれ…う…」
この真っ暗な世界でどれだけ泣き続けただろうか。
泣きすぎて過呼吸を起こしながら、俺はそんなどうでもいいことを考える。
体感的には1、2時間だろうか。
最もこの悪趣味な世界に時間だなんて概念が…人間の作った尺度が当てはまるのかは知らないが。
「久しぶりに泣いた…な」
ポツリと呟き、少し自嘲気味に笑みをこぼす。
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