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コテり、と不思議そうに首を傾げた後、ピエロのように喋る何者かは、ニヤッと、引き裂けたように吊り上った笑みを浮かべ。
「ワタシが何者かだなんテ、さして問題じゃないサ!重要なのワ、ボクと君がここで出会ったことなんだからネ!」
言外に、俺の質問に答えるつもりはない、と、この真っ暗な空間において、異質な口調で言った。
待て、なんだ、この状況は。
落ち着け、俺、スケールは違うが唐突な出来事や事故なんて日常的に経験していた筈だ、現状を把握しろ、情報を整理しろ。
俺は死んだ、だが、なぜか目が覚め、同時にこの真っ暗空間に浮き漂っていた、ありったけの涙を流して、本音を垂れ流して…心地良い感覚に包まれながら、俺は笑おうとして…この、訳のわからないピエロのように喋る…この、男…?女か…?が、現れた…と。
そうか、と一人で納得し、俺は冷静に現れた人物に目を向けた。
ピエロのような口調とは裏腹に、紳士然とした、煌びやかな装飾の施されたスーツに身を包んでおり高貴なオーラを放っている…が真っ赤なスーツがそのオーラを何か間違ったものに変えてしまっている。
そして顔の上半分を覆う、金色を基調に黒色で様々な模様の描かれた仮面を着け、覆われていない下半分の口はニヤァっと三日月のような笑みを浮かべている。
金の仮面に垂れかかる、少し長めの髪は、どういうつもりなのかはわからないが、黒や灰色、どす黒い赤…あまり明るいとはいえない色が何色も混ざり合っていて、口調から連想するピエロ、というイメージをより強くさせる。
一言で言えば、異様、ただその言葉しか出てこない。
だが…見た目なんてどうでもいいほどに、不可解な点がある。
こいつは…どうやって、ここにきた?
「ひとつ聞こうか、お前はどうやってここにきた」
「うン?その質問は何の意味も為さないナ、だってここはワタシの空間なんだからネ、どうやっても何モ、ボクがここにきたからここという空間は在ル」
何を言っているのかさっぱりわからない、が、ここは天国でも地獄でもない、このピエロ野郎の所有する不思議空間だということはわかった。
…驚いた、が、死んだはずの俺をこんなわけのわからない空間に呼んだこいつは、明らかに俺と同じ人類という分類に属する存在ではないということは確かだ。
考える等ということは無駄、思考をすて、状況に流されるしかない。
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