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「そうかよ、なら俺に何の用だ?」
「うン?何の用?」
「とぼけんなよ、お前の作った空間に死んだ俺が放り込まれてんだ、用もないのにそんなことをするはずねぇ」
外見に似合った、おどけたように首をかしげるピエロ野郎に苛立ち、乱暴な口調で俺は言い放った。
「あっハ!それもそうだネ!君には面倒な前置きなんて必要ないかもネ!ワタシとしてモ、理由やその説明なんテ、まだるっこしい事したくないもノ」
ケラケラと、変わらず引き裂けたような笑みで笑うピエロ野郎、どうにも、俺の事をおちょくってるようにも気に入っているようにも見えて腹立たしい。
そんな感情が顔に出ていたのだろうか、ピエロ野郎はそれで、と切り出し。
「実はネ!かわいそうにもおっ死んだ君に朗報だヨ!慈悲深くて心優しいこのボクガ!なんとなんト!君を蘇らせてやろうって話しを持ってきたのサ!」
「は?」
何を言ってるんだ…と、そう考えかけて…やめた。
生き返らせる?そりゃあこんな不思議空間を作りだしたらしい存在だ、人の生き死にを操れても不思議…ではあるが、まったく理解できない訳でもない。
なるほど、確かに生き返ることが出来るのならば、それはとても幸運なことだろうさ、だがな…
「何が朗報だよ、だ、俺はお前を信用できないし、生き返ろうとも思わないね」
「…ヘェー」
そう、幸運だ、おそらく人生で一番の幸せでまたとないほどの奇跡だろうよ。
だが、いった通りこのピエロ野郎がただ生き返らせて、はい終わり拾った人生エンジョイしてねバイバイで終了、なんてことは確実にないだろうし
俺は死ぬ前にキチンと与えられた役割を果たし、ジジイからも言質をとって、あの施設の存続は決まって居る。
だったら、俺の生き返る意味もない…それに、あの世界に戻ったって、あの人は居ないんだからな…施設だって、生き返ったとしてもまたいつか寿命、もしくは別の命令で死ぬ、そうなった時に、俺以外に施設を守れる人間が育ってなきゃあの人と俺ががんばった意味も消える。
ジジイのことだ、1人2人ぐらいには目をつけてるだろうし、100年と言い切ったんだ、それなりに準備もあるだろう。
だから、俺は生き返るつもりは…ない。
「ワタシ、感激しちゃったヨ、こういう展開になるト、必ず君ら地球人…特に日本人はとびついてくるっていうのにサ」
「はっ、万人が同じ反応だと思ってるのかよ、馬鹿だろお前」
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