LUNA―月―

2/134
前へ
/134ページ
次へ
「いらっしゃいませ」 「これプレゼントなんですけど…」 「はい、ラッピングは…ピンクのリボンでいいですか?」 「はい、それでお願いします」 黄色とピンクとオレンジが可愛らしい、ハワイアンキルトのタペストリー。 中央にあしらったプルメリアの柄がとてもキュートで、作っていても楽しくて仕方がなかった。 私はこの小さなセレクトショップ、Dolphinで働いている。 初めは趣味で作っていたキルトを、お店に置いてもらっていたんだけど、ありがたいことに品物がよく売れるという事で、お店に常駐してキルトを作製、時々店番もしているというわけ。 まぁ、これだけじゃ生活出来ないので、夜は中華料理店でバイトをしているんだけど。 この日は珍しく、男性がプレゼント用に、私が作ったお気に入りのタペストリーを購入してくれた。 背が高くて、清潔感がある人。 手を顎において、店じゅうゆっくりと品物を見て回ると、キルトのコーナーでタペストリーを手に取った。 その身のこなしがスマートで、なんだか目を奪われてしまった。 一枚一枚手作りなだけに、手元から無くなってしまうのは、少しだけ淋しいけど 、正直とっても嬉しい。 「これって…手作りですか?」 不意にこちらを向いたので、思わず心臓が跳ねた。 「は、はい。手作りなので一点ものになります」 お客様がニコッと微笑んだ。 優しい目をしていて、微笑むと少年っぽい可愛さが垣間見える。
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加