LUNA―月―

4/134
前へ
/134ページ
次へ
今日はとてもいい天気。 青空が広がり陽射しが少し強いけど、爽やかな風が肌に心地いい。 「あの…」 ふいに後ろから声をかけられて振り向くと、さっきタペストリーを購入してくれたお客様。 また心臓が更にドキドキし出した。 「あ、はい。先ほどの…何かありましたか?」 もしかしたら、さっきのタペストリーのことかしら? 頭の中で様々なクレームが渦を巻く。 やっぱり返品したいとか? 違うものと交換したいとか? それとも… 「あれは…あ、さっき買ったタペストリーは、壁に飾るんですよね?」 低い声でゆっくり話すその人は、タペストリーの使い方を知りたいようだった。 「あ、タペストリーはもちろん壁に飾って頂いても構いませんが、テーブルセンターにしてもいいですし、何かの上にかけたり…何枚も繋げてベッドカバーにすることも出来ますし…使い方はけっこうあります。使われる方が、使いやすい形で使って下さっていいんですよ?」 「あぁ…因みにベッドカバーみたいに大きなものを作るのには、どれくらいかかりますか?」 「時間ですか?制作にはかなりのお時間が必要でしょうね?お値段もかなりかかります。まぁ、それはご予算しだいですけれど、やっぱりそれなりの生地を使った方が、本当にいい作品が出来るんですね?それに、長く使えますし…あっ」 ついついしゃべりすぎてしまった。 「そうですか…ちょっと見てもらいたい物があるんですけど、いいですか?」 「はい?あ、あぁ、少しならいいですけど?」 「良かった。それじゃランチでも一緒に」 「えっ?」 なんだこれは…まるでナンパみたいじゃないか?
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加