LUNA―月―

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「あの…あなたのお名前教えてもらえますか?」 「えっ? あ、私ですか?あ、私は○○○といいます」 お財布に入れてあった名刺を取り出すと、うやうやしくユチュンに渡した。 「○○○…さん。これからヨロシクお願いします」 「こちらこそ、宜しくお願いします。あっ、あの…私そろそろお店に戻らなきゃいけないので…これで失礼します」 話に夢中で、私のランチは手付かずのままテーブルの上だ。 お腹空いちゃうけど、ダイエットと思えばいいかもしれない… 自分の分の代金を渡そうとすると、ユチュンの温かい手が触れた。 「ここはごちそうさせてください。それと、お店が終わったら打ち合わせいいですか?」 「あ、ありがとうございます。えっと…はい。では…」 なんだかまた急にドキドキしてきてしまって、そんなに急いでもいないのに、小走りになってる自分がアホらしい。 今日はお店が終わったら、夜は中華料理店でバイト。 PVの撮影協力の話と中華料理店でのバイトを、瞬時に秤にかけるけど、直ぐに今日はバイト休んでもいいかという結論に達した。 Dolphinに帰ってから、電話でオーナーにことの次第を説明すると、とてもノリノリで喜んでくれて、ユリさん共々お店の宣伝にもなるので、全面協力を約束してくれた。 ユリさんなんかは、ユチュンのグループをよく知っているようで、閉店まで何回も『いいわね?いいわね?』と背中を叩かれた。 その度に針が指に刺さりそうだったけれど、なんとかそれは避けることが出来たのは幸い。
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