第1章

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なるべく二人を視界に入れないようにして、一香ちゃんと悠馬君の希望する乗り物に次々に乗る。 キッズパークの大半の乗り物を制覇したみたい。 遊び疲れたのか一香ちゃんが目をこする。 「一香ちゃん、眠たくなった?」 「うん・・・」 そう答えるのもやっとのような感じ。 「そろそろママとパパの所に行こうか」 歩けなさそうな一香ちゃんを抱きかかえようとすると加藤様がやって来て『一香』と呼ぶと一香ちゃんが手を広げて加藤様に抱きついた。 一瞬にして全部持って行かれた感じ。 ずっと遊んでたのは私なのに。加藤様なんて女の人とただ喋ってただけなのに。 加藤様はそのまま一香ちゃんを抱きかかえると『それじゃあ』と蜂谷さんに頭を下げた。 「ゆーまくん、バイバイ」 一香ちゃんはそれだけはしっかり言ってそのまま寝てしまった。 「何怒ってる?」 「怒ってません」 「そうか」 病院へ向かう道中話したのはそれだけ。 加藤様と遊園地デートなどと浮かれてた午前中の自分を呪いたい。 むしろ行くなと忠告したい。 こんな空しい気分になると思いもしなかった。 まだ寝ている一香ちゃんを加藤様が抱きかかえて、病室へと向かう。 途中で買ったケーキの箱を持った私がトントンとノックすると『はーい』と一雄さんの声がした。 「ごめんね美湖ちゃん」 一雄さんが私を見て謝る。 そして加藤様に一礼すると寝ている一香ちゃんを受け取ろうとするとしっかりと加藤様の洋服を持って離さない一香ちゃん。 「よっぽど彼氏の事気に入ったんだね」 一雄さんが嬉しそうに言う。 一香ちゃんにまで取られてしまった・・・でもしっかり握ってる手が可愛らしくて『そうだね』と納得する。 「絹ちゃんは?」 「もうすぐ帰ってくると思う」 「どっちだったの?」 「男」 「良かったね。おめでとう。そうだ。これ絹ちゃんにケーキ」 「何から何まで悪いね。あ、一香起きた」 目を覚ました一香ちゃん。 「パパ」 「おはよ。一香。パレードと遊園地楽しかった?」 「うん。ママは?」 「もう来るよ」 言葉通りガラガラと扉が開いて車いすに乗った絹ちゃんがやって来た。 「お疲れ様」 そう声をかけると『ごめんね美湖』とこれまた謝られた。 「楽しかったよ」 一香ちゃんが絹ちゃんのもとに駆け寄ると『そっか』と笑顔を見せた。
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