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鼻の奥を刺激するような鋭い臭い、ゴポゴポと何か液体を沸騰させているような音。そう例えるなら化学実験室で薬物実験を行ったときのそれと酷似している。
怠い体に鞭を打ち目を開け起き上がると、最初に目に入ったのは薬品の並んだ棚とその横にある机に置かれた沸騰した黒い液体が入ったフラスコらしき器具。
「ここは?確か俺は!? 」
気を失う前の状態を思いだし右腕を見る。そこには真っ白なギブスでがっちり固定されている腕がある。脚にかけてあった毛布を捲ると同じくギフトで固定されている両足。あとは、えっと……
「ククッ、そんなに心配せんでも体は問題ない。」
「えっ!?」
突然横からかけられた声にびくりと肩を震わせそちらを向くと、黒髪が踝まで延びたワンピース姿の少女が窓に腰掛けシャリシャリとリンゴを食べながら此方を見ていた。少女といっても雰囲気がどことなく違っている。言うなれば少女の皮を被った何か……
「あ、あの……貴女が助けてくれたんですか?」
「そうであるとも言えるし、違うとも言える。」
「それはいったい?」
「まぁ待て、あと一人集まってから説明する。にしても……ふむ。」
窓から降りるとスタスタと近づいてくる少女。少女が一歩近づくごとに体が強張りついには手が触れる距離まで近づかれ顎を捕まれ無理矢理に視線を合わせられた。
髪と同じ漆黒の瞳に俺の黒茶の瞳が写し出される。視線をずらそうにも闇に引きずり込まれるような感覚がそれを阻止している。
「魂の定着は成功、記憶は語源機能だけでなく直前のものまであるか……なるほどその本質は憤怒か。」
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