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「ありがとう。ちょっと落ち着いた。」
「よかったです。」
相手の顔色も心なしか良くなり、手を離そうとすれば今度は美鈴の方が力を入れてきた。
無理に離すのもどうなのかと悩んでいれば、手のひらを指で軽くひっかかれる。
「こそばゆい、ですよ。」
「そ、そう?ごめんなさい。」
慌てたように美鈴は引っかくのを止めたが、手は握ったままだった。
「ねぇ、よかったら今から私の部屋に来ない?」
何故??
渚の頭にはクエスチョンマークが多数だった。
美鈴とは会社以外で繋がりはない。ご飯でさえ食べに行ったことも。
ましてや、男性社員から人気もあり近寄りがたかった彼女に、むしろ距離もあけてたくらい。
そこまで考え、渚ははっとした。
(伊織や絵梨花に慣れ過ぎちゃったのか)
美女に免疫が着いたのだと察した。
でなければ、こうして近くで話すことも手を握るなんて行動も普段ならしない。
「すみません、私もう帰らないと。」
逃げよう。
そう決心し、椅子から立ち上がろうとすると、同時に彼女も立ち上がった。
そして無言で一緒に店をでる。
「あの、美鈴さん?」
「私も緊張、してるのよ?」
そう言い、私の手を取り胸に手を当ててきた。
ふにっと柔らかい感触が手から伝わり、心音所ではない。
「外でこんなこと、やめましょう。」
「外でなきゃいいの?」
「いえ、そういうわけじゃなくて。」
どう言えばいいのか。
うーんと悩んでいると、突然ぱっと手首を握られ、その手を腰に当てられた。
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