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じっとりとした脂汗が額に滲み前髪が張り付く、着ていたワイシャツも穿いていた制服のスラックスにも体から滲み出た脂汗で肌に張り付いていた。
目を瞑り深呼吸を数度繰り返す、そして再びまぶたを開いた瞬間不意に背後で物音が聞こえ驚いた僕はそちらへと顔を向ける。
「佐久間くん」
そこには僕の数少ない友人高柳くんが柔和な笑みを浮かべいつも通りに僕の名前を呼んだ。
「高柳、くん?」
思わぬ人物の登場に僕は思わず彼の名を口から零す。
何故高柳くんがこんな所に居るのだろうか、そんな考えが頭に浮かびその後すぐに頬が紅潮していくのが分かった。高柳くんが現れた事でホッとしてしまった自分に気がついたからだ。
紅潮した顔を見られまいと僕はゆっくりと顔を正面に向けるとパペラットから足を降ろしフェンスに背中を預けた。
「……どうしてこんな所にいるのさ」
そうつぶやくと彼は静かに笑った。
「佐久間くんこそ、わざわざ夏休み-それもわざわざ誰も居ない日を狙ってこんな所に来るなんて随分と暇そうだけど?」
彼の言葉に心臓が跳ね上がった、きっと高柳くんは僕が今日ここで死にに来た事を見透かして来たのだろう。
「何って、分かるでしょ、自殺だよ自殺、それがわかっててわざわざここまで来たんでしょ」
僕がそう言い終えると僕が寄りかかっていたとなりのフェンスが軋む音を立てた、ちらりとそちらへと目を向けると僕と同じ様にフェンスの向こう側からフェンスに寄りかかった高柳くんの横顔が視界に写りこんだ。
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