緋色の彼

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 高柳くんは何処か不思議な雰囲気を纏った人だった。  高校生とは思えない程に鍛え上げられた体に高い身長、短く切られた髪に整った顔立ちを打ち消す様に顔の左半分に広がる火傷の痕のせいでまるで暴力団の構成員であるかの様な風貌をしているのにも関わらず、彼の周りには常に人が居て、その中心に居る彼はいつも柔和な笑みを浮かべていた。  僕は正直そんな彼が苦手だった。自分とは違い明るく、人望もある、彼が隣に居ると自分が日陰者であると再認識させられ気が滅入り、彼を妬ましく思ってしまう自分に嫌気が差すからだ。  彼はそんな僕の気持ちを知ってか知らずか友人としての距離を必要以上に縮めようとはしなかったがそんな彼の振る舞いに僕が更に追い詰められる。  だから僕は彼の事が苦手だ、だが同時にかけがえのない大切な友人であるとも思っている。  彼はこうして僕が困り果て、追い詰められている時には必要な手を差し伸べてくれる、それはきっと善意なのだろう、彼に手を差し伸べられる事で僕がどれだけ惨めな気持ちになるか彼が分かっているのか分からないのか。  彼はきっと分かってて僕に手を差し伸べてくれるのだろう、そして僕は惨めな自分を忌々しく思いつつも彼の手を掴まずにはいられなかった。
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