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 目の前に立つカザンは目の瞬(まばた)き、呼吸、手と足、腰骨や両肩の揺れと、身体のあらゆる部位と動きをつかって、複雑な変拍子のリズムを奏(かな)でていた。これでは目を閉じても無駄だろう。音は防げないし、仮に耳栓を使用して聴覚をさえぎっても、空気を揺らす変拍子のリズムはこちらの体内に作用してくる。  その場合の効果のほどはわからないが、東園寺家では秘伝「呑龍」を破る数々の秘策に対応するよう過去2000年以上も技を進化させてきたはずだ。付け焼刃の対策で効果があがるとは思えなかった。  タツオは静止した時間のなかで、必死に体内クロックを加速しようとしていた。カザンに悟らせないように、遅延した時間流のなかで体内時計を加速させていく。
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