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「呑龍」は相手のクロックを静止に近い状態まで遅くする技で、「止水」は自分のクロックを究極まで加速する技だった。本来は双方の力が補完して、完璧なひとつの秘伝を構成するものかもしれない。近衛(このえ)四家で東園寺(とうえいじ)家と逆島家がつねに双子のような扱いをされていたのは、双方の家格だけでなく、秘伝の相補的な性格を、日乃元(ひのもと)の朝廷や貴族たちが歴史上高く評価したせいもあるのだろう。
タツオの身体は悲鳴をあげていた。カザンの秘伝で、脳内のクロックは停止寸前まで落とされている。その状態で「止水」を発動中なのだ。ブレーキとアクセル、ふたつのペダルを全力で踏みながら、レーシングカーを走らせるようなものだった。
脳のなかだけでなく、身体中の筋肉と関節が過度の緊張で、ぎしぎしときしみをあげそうだ。
カザンの口元が高速で動いた。残像が残るほどの速さだ。
「…ゆ……く……ぞ……!……タ……ツ……オ…」
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