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「…もう…楽し…て勝…つの…は止…めた…」  純白の羽織袴(はおりはかま)のカザンが20近い全身のあらゆる所作をつかって、東園寺家秘伝「呑龍」を発動している。先ほどよりの変拍子のリズムが急速になり、いくつかリズムの起点が増えているようだ。今ではチックのように頬(ほお)が痙攣(けいれん)し、首筋も筋肉が不規則に引き攣(つ)れている。 「…こい…つは…フル…パワ…ーの…『呑…龍』…だ…今の…状態…でつ…かえ…ば一…週間…は身…動き…もで…きな…いが…しか…たな…い…」  カザンの表情が晴れやかに変わっていた。なにか新しい玩具(がんぐ)でも見つけたようだ。 「…おま…えを…倒す…には…力を…出し…惜し…みし…てい…られ…ない…」  タツオはうなずいてみせた。カザンにはひどくゆっくりとして見えるだろうが、意思は伝えておきたかった。どちらが勝つにしても、この勝負で日乃元(ひのもと)の本土防衛作戦の主役が決定するのだ。
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