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「…な…ぜ…東…園…寺…の…祖…先…が…『止…水』…を…恐…れ…た…の…か…わ…か…ら…ん…」  カザンが光速でタツオの周囲を回転し始めた。死角に入るたびにタツオは一撃に備え、身体を固くした。つぎの打撃は左脇腹だった。見えない角度からの肝臓打ちである。タツオはまたも打ち倒され、悶絶(もんぜつ)した。  口のなかはめちゃくちゃだ。血の味と酸っぱい胃液が混じって、とても耐えられなかった。右手をついて、ゆっくりと立ちあがる。カザンは何度でもタツオを打ち倒すつもりのようだった。タツオは新品の青い畳の上に、血と胃液の混合液を吐きだした。  カザンがゆらゆらと揺れながらいう。実際には身体を揺らしているだけだろうが、それが瞬間移動のような速さなのだ。
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