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暗闇を覆う闇黒がそこにはあった。 藜は光を映さないはずの目を見開き、闇を見据える。 聴覚を集中しようにも、自身の激しく打ちつける鼓動の音が響くのみ。 ───撒いたか? 言葉を飲み込み、代わりに静かに息を吐く。 藜は全盲である。 しかし、闇を恐れはしないし、常時失った光を全身で感じることは可能だ。 それでもこの状況下において、藜は一点の光も見いだせずにいた。 藜はゆったりと立ち上がると、手探りで前へと進む。 此処はどこだろうか。 木造建築の香りと、多少のカビ臭さ、そして、几帳面に四方八方に平然と並ぶモノは、どれも歴史と伝統を感性的に訴えかけてくる。 緊迫する現状の最中でありながらも、藜は魅入られるようにとある一点に足を向ける。 すると、はらりはらり… と、まるで誘われるように、どこからか“何か”が藜を取り囲み舞い散る。 濡れ烏の羽。 藜はその羽の主を知っているような、不思議な感慨に襲われた。 そして、藜はその羽に導かれ“此処”の最奥に辿り着く。
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