【五話 栄二さんの尻子玉】

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【五話 栄二さんの尻子玉】 栄二さんは暇な時、私を構って構って構い倒す。山のようにメッセージをくれたり毎日電話で数十分話したり…。それが幾日も続いたかと思うと、ある日ぱたっと無くなって理由を聞けば、 「仕事が、忙しい」 寂しくてしつこくすると、ふいと無視するようになる。でも本当は自分が嫌になったんだろうな。女にうつつを抜かしている自分が許せなくて、今度は取りかえすように仕事に励む。仕事だけになると、それはそれで寂しくなりまた戻ってくる。 女も一人に熱中しすぎると溺れるのが怖くり、わざと夜の街に繰り出したり、別の女と遊んでみたり。人のことは束縛する癖に自分は束縛されるが大嫌いだったり。 初めは驚いたけれど、そうやって無意識にバランスをとっているんだろうな。こちらは気持ちを乱される。まあいいか。尻子玉もあるし。栄二さんは、 「返さなくていい。それは佐緒里が大事に持っておいてくれ。」と言ったけれど、あんまり構わないと、猫にあげちゃうからね。今頃どうしてるかな?指で、こちょこちょと尻子玉をくすぐる。 とすぐ、ぶるるっと携帯電話が鳴った。
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