【七話 思い出売り】

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男は、綺麗な女とのちょっとしたエピソードを大切にし、ときおり宝物のように取りだしては愛撫する。 結局、日本人は、地味で真面目な男が多い。 98%が、そうだといっても過言ではない。 「綺麗な女に話しかけられる男が羨ましい」そう思いながら、自分では話し掛けると言う事は、まず無い。 普通の女にだって話し掛けづらいのに。 性格だ、何だと言っても、結局は、綺麗な女は憧れなのだ。 遠くから、気づかれにくい所から、じっと見てしまう。 何十年もそんな人生。 けれどふとした瞬間の、ささやかな綺麗な女との出来事ができると、繰りし繰り返し思い出す。指が触れあった、もしかして自分に気持があるかも、それで充分酔える。 男と言うのは、厄介だ。可愛くもあるが。 「記憶の愛撫?」女は、あまりしない。 「姉ちゃんってさぁ。ここで何してるの?」 飛鳥がそう聞いてきた。 「ただの喫茶店の主人。悪い?」 「ふうん。」もっと、昔はいろんなことしてたのに・・・とでも言いたげだ。 「そうね・・・男に思い出を売ってあげてるのかな?」
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