【十一話 いじわる女】

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喫茶 水琴窟は、一時ある女性グループの溜まり場となった。 コーヒー一杯で、何時間でも話をしている。 誰がリーダというわけではないけれど、中に一人いじのわるい女がいた。 仮の名を晴子としよう。 晴子は、口を開けば誰かの悪口を言った。 夫も師匠も友達も芸能人も、そして付き合っている彼も。 さおりもハイハイと聞いていたのだけれど、ある時、「ブサイクブサイク」とあまりに人を悪く言うので「そんなことないですよ。良いお顔です」と答えて、オードリヘップバーンの顎を引き合いに出そうと「エラが・・・」と、少し言い始めたら、晴子は遮り、 「ひどーい。そこまで言う?」と喜々として大騒ぎをし始めた。 いつも「誰それが」と引き合いに出しているから、佐緒里はマズイと思った。 けれどもう遅い。自分に都合のよい所だけ、しっかり取り出して話すのが彼女の常套句だから。 案の定、佐緒里がそんなことを言っていると、相手の方としばらくぎくしゃくする羽目になった。 それ以降、どんなことも晴子へ話さないように心がけた。 一方で晴子は、佐緒里が教えたコーヒーの豆知識など翌日にはちゃっかり人に披露して、さも自分で得た知識のように話すのだ。きっと佐緒里が話したと覚えていないのだろう。 どんな店でも、従業員は自分専用の奴隷か何かと勘違いしすぐ威張り散らす。 「ほかの店で」「東京では」「有名店では」こんなことはしないのだと。そして、「私はこんな人を知っていて」「昔、私は有名だった・・・」 すぐに常連客気どりで大騒ぎ。特別待遇を要求する。店を始めたばかりの佐緒里は、もしかしたらすごい人なのかもしれないと思った。 けれど、赤の他人にすら自分は凄い人間なのだとひけらかさないで済まない彼女は、よほど自信が無いのだろう。 飲み食いの仕方も汚い。帰った後、佐緒里は、ため息をつきながら片づける羽目に。 元モデルかなんだかしらないけれど綺麗じゃない人達だ。 本当に自信がある人は、そんなことしない。
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