【十七話 晴子さんの、新しい彼氏】

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晴子がしつこい。 「メッセージ届いてる?」と、無視しているLINEの返事を求める。 嫌だからスルーしているのに。 そのままにすると一方的にスタンプを送り続けて、最後にはこちらの都合も考えず電話してくる。 だいたい、ちょっとやり取りしただけで「私に興味あるでしょう?」と自信満々に聞いてくる。何だこの女は、上から目線だなあ、興味あれば言うって。 会話も、こちらが何か話し始めると「その分野ですごい人と知り合いなの」「もっとすごい事を知っている」と畳みかけて自分をひけらかす。 岐阜に来たばかりでガイドが欲しい俺は、どれだけのもんかとちょっと興味が湧いた。 まあまあ綺麗だし彼女の知識に感心し共感したふりをして「美しい方ですね」と軽薄な褒め台詞を連発した。そうしたら簡単だった。 晴子は、あまり頭の良くない女なのだ。 しかし、晴子と付き合うのはなかなか面白い。今まで知らなかった世界を見せてくれる。友達はなかなか秀逸な顔ぶれで女は元モデルや個人経営者それに美人揃いだ。男も社会的地位が高い人間か金持ちや有名人ばかりだった。俺は人間としての実力があるからそいつらと会えれば、2回目からは晴子抜きでも付き合えるのだ。 パーティ、イベント、ワイン会、これまでの人脈でより遊びに幅が出た 勿論晴子は好きだ。 けれど、付き合っている女は、そのままにしておいた。 何て言うのかな、晴子は付き合う相手を、地位や見てくれ利用できるか、そんなことで選んでいる。どうせ俺もそうなんだろう。 晴子の見せてくれる世界に好奇心もあるが、内面を見て俺を好きだと言ってくれる女とどうして別れる必要があるだろうか? それに、上っ面しか理解できない晴子とは、深い価値観を共有できない。 しかし晴子のおかげで、Facebookの投稿内容も幅が出た。 お洒落になった遊び方、上手そうなシェフの料理。綺麗な女がずらりと揃った友達リスト。 体を鍛えているマラソン友達も、医者仲間も、どうだ悔しいだろう俺に追いつけないだろう。羨ましいだろう 友達の数も、「いいね」もうなぎ昇り。 まあ、彼女と一緒の時の写真だけは、晴子を除外して投稿すればバレないだろう。
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