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水琴窟の看板猫ショコラ。
ショコラ色の体とコーヒー色のふさふさ尻尾。
ご主人様が優しく撫で始めると、伏せをして「もっとゆっくり撫でて」とおねだりする。
するとご主人様は、手のひら全体で楽器のようにゆっくり優しく撫で始める。だから私は、尻尾をふりっふりっとして「気持良いよ」と、伝える。
ご主人様はときどき、からかって指でツーっと撫でたりする。
そうされると、くすぐったくて尻尾の先がピッピッっと痙攣してしまう。
両手の三本指で体全体をツーっと撫でられると、気持ち良くてでもこそばゆくて、コーヒー色の尻尾がざわざわ蠢く。
あんまり御主人さまが何度もこそばすと、ふいっと隣の部屋に移動する。
でも大好きだから近くで、横目で、ご主人様を見て見ない振りする。
ご主人様はときどき意地悪するけど、私はすごく愛されていると知っている。
お店にお客さんが来ていると、「出てきちゃダメ」と言われている。
けど可愛がってくれる栄ちゃんが来てるから、ついついお店に歩いて行った。栄ちゃんだけの時は、怒らないから。
棚にいい匂いのする袋があって、いつも気になっている。
「栄ちゃんに見せてあげよう」と、ちょっと触ってみた。
「ガッシャーン」何か大切なものを壊したみたい。
「ショコラ!」
御主人さまが怒ってる。怖いよう。
「ごめんなさい。ごめんなさい」と謝るけど、
「何度言ったらわかるの!がっかり!ショコラ嫌い」と怒るから怖くなって、逃げ出した。
けどそんなに遠くには行けなくて、しょんぼりしながらお店の近くをうろうろしていた。
しばらくすると、
「ショコラ!ショコラ!」
と、御主人さまの声がした。
けど、まだ怒ってるみたい。
もうきっと嫌われたんだ。
また怒られるのが怖いから、出ていけないよう。
どうしよう。
再び、声は聞こえなくなった。
早く、迎えに来て欲しいよう。
「ショコラ」優しい声がする。
「ご主人様ごめんなさい」
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