【十七話 清四朗さんの誕生日(恵理さん)】

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水琴窟の看板猫ショコラ。 ショコラ色の体とコーヒー色のふさふさ尻尾。 ご主人様が優しく撫で始めると、伏せをして「もっとゆっくり撫でて」とおねだりする。 するとご主人様は、手のひら全体で楽器のようにゆっくり優しく撫で始める。だから私は、尻尾をふりっふりっとして「気持良いよ」と、伝える。 ご主人様はときどき、からかって指でツーっと撫でたりする。 そうされると、くすぐったくて尻尾の先がピッピッっと痙攣してしまう。 両手の三本指で体全体をツーっと撫でられると、気持ち良くてでもこそばゆくて、コーヒー色の尻尾がざわざわ蠢く。 あんまり御主人さまが何度もこそばすと、ふいっと隣の部屋に移動する。 でも大好きだから近くで、横目で、ご主人様を見て見ない振りする。 ご主人様はときどき意地悪するけど、私はすごく愛されていると知っている。 お店にお客さんが来ていると、「出てきちゃダメ」と言われている。 けど可愛がってくれる栄ちゃんが来てるから、ついついお店に歩いて行った。栄ちゃんだけの時は、怒らないから。 棚にいい匂いのする袋があって、いつも気になっている。 「栄ちゃんに見せてあげよう」と、ちょっと触ってみた。 「ガッシャーン」何か大切なものを壊したみたい。 「ショコラ!」 御主人さまが怒ってる。怖いよう。 「ごめんなさい。ごめんなさい」と謝るけど、 「何度言ったらわかるの!がっかり!ショコラ嫌い」と怒るから怖くなって、逃げ出した。 けどそんなに遠くには行けなくて、しょんぼりしながらお店の近くをうろうろしていた。 しばらくすると、 「ショコラ!ショコラ!」 と、御主人さまの声がした。 けど、まだ怒ってるみたい。 もうきっと嫌われたんだ。 また怒られるのが怖いから、出ていけないよう。 どうしよう。 再び、声は聞こえなくなった。 早く、迎えに来て欲しいよう。 「ショコラ」優しい声がする。 「ご主人様ごめんなさい」
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