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1年前、竹花別院の藤祭りに女主人は茶店を出した。折角だからと住職に勧められ祭りに来る子ども達へ美濃和紙を使った風車体験をしてもらうことになった。そこで住職から系列である竹花高校へ「奉仕をしてはくれないか」と連絡が入り僕が生徒たちの引率をしていった先で出会った藤小紋の女性に心を掴まれた。
すぐに「生徒へ学園祭の催しに先日の風車体験をさせたいのですが?」と電話をかけた。
女主人は学校まで出向い来、生徒へ作り方など教えていたのだけれど、
「清水先生が作って無い!」と指摘され不器用だからと逃げていたが、みんなが騒ぎ始めたので仕方なく女主人に風車の作り方を教えられることとなる。とある男子生徒が「先生――」とうひうひからかった。僕は真っ赤になり
「そう言う事を言ってはいかん」とたしなめた。
女主人は、横を向きうなじのほつれ毛をついと直しながら、(私、まだ礼儀を知らぬ学生さんにからかわれました。恥ずかしかったわ。もちろん私は、素知らぬ顔をしましたよね。先生)女主人は、そう言っているように感じられた。
「ありがとうございました。」
「・・・・」
財布の中にあるありったけのお金を女主人に支払い、代わりに手にしたものは黒々とした「ナマコの干物」。触手は交わせず、身をかわされたか。
うす紫の着物に、うす紫の水うちわ。あの日の君を想い今宵は悶えそうだ。
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