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「じゃ、行ってくるわね」
真新しい白のワンピースを纏った薫は振り向くと、桜色のルージュを引いた唇を微笑ませた。
「あんまり遅くなるなよ」
俺はソファに寝転がったまま答える。
声がくぐもって不機嫌に響くのを感じた。
どこの誰に見せるつもりでそんな格好をしているのか知らないが、俺はお前の素顔を知っている。
「分かった」
こちらの心の内を見透かしたように、相手はどこか寂しく笑った。
カツン、カツン、カツン、カツン……。
薫のハイヒールの靴音が遠ざかっていくのを聞きながら、俺はソファの下から結婚情報誌を取り出す。
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