第1章

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「じゃ、行ってくるわね」 真新しい白のワンピースを纏った薫は振り向くと、桜色のルージュを引いた唇を微笑ませた。 「あんまり遅くなるなよ」 俺はソファに寝転がったまま答える。 声がくぐもって不機嫌に響くのを感じた。 どこの誰に見せるつもりでそんな格好をしているのか知らないが、俺はお前の素顔を知っている。 「分かった」 こちらの心の内を見透かしたように、相手はどこか寂しく笑った。 カツン、カツン、カツン、カツン……。 薫のハイヒールの靴音が遠ざかっていくのを聞きながら、俺はソファの下から結婚情報誌を取り出す。
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