メールを開いたら…

5/5
前へ
/5ページ
次へ
「…ちゃんと聞いて。」 目の前まできて歩みを止める。 彼は怯えたような目で、私と沙希を交互に見た。 「私はね。………"沙希以上に大切な人"はいないの。 喩え、あなたに告白されていたとしても、"断ってた"。 ……それは気がついてたんじゃないかな?」 薄く微笑む。 ……彼の表情は絶望しかない。 「……あなたは私の"一番大切な人"を奪った。だから、ね?」 私は更に笑みを深くした。 「"今ここで、アナタが一番欲しいものを奪ってあげる"。」 ……私は隠し持っていたナイフを取りだし、自らの首を掻き切った。 『麗那………!!』 ……………大好きな人の声が聞こえた。 私は待っていたのかもしれない。 彼女が迎えに来てくれることを望んでいたのかもしれない。 死んでいても、彼女に人を殺させたくなかった。 ただの私のワガママだよ、沙希。 これで、彼は"生き地獄"を"永遠"に味わう。 これが、私の"望み"で"復讐"だ。 ………ああ、これでやっと"ずっと一緒"だね。 ……サイレンの音が響く。 現場には、"山下くん"一人が残されていた。 "少女の死体"と共に。 警察と一緒にパトカーから降りてきたのは、"香菜ちゃん"だった。 不審に思い、交番に駆け込んだのだろう。 しかし、一足遅かった。 …"麗那"は自殺していたから。 ずっと香菜は心配していた。 沙希が亡くなってから、ずっと。 けれど、沙希を介してアドレス交換をしただけだった。 丁度一年前に亡くなった《沙希》。 丁度一年後にメールしてきた《麗那》。 不安にならないはずがない。 まさか、こんなことになるなんて…。 二人が本当に仲が良いのは知っていた。 きっと…離れ離れが辛かったんだと思う。 ……でも、誰もこんな結末は望んでいなかったはずだ。 ………気がついた《山下くん》が全てを自供し、真相が明るみになった。 しかし、《沙希》の幽霊を見たことは誰も信用しなかった。 ………信じたのは《香菜ちゃん》だけだった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加