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メールを開いたら…
いつも何気なく、操作しているスマートフォン。
今日は何か違っていた。
でも、何が違うかといえば、わからない。
日常と微妙に違うことくらいで違和感なんて、いつもなら感じない。
…来るはずもない相手からのメール。
いつもなら見もしないで削除しているだろう。
気になったのは、開いてもいないのに既読になっていたからだ。
基本的にメールのやり取りをするような友だちなんていないから、メールボックスはいつも空っぽだ。
日付は今日。いつ開いたのだろう。
日課の日記編集をメール機能でやろうと開いたら、気がついてしまった。
取り敢えず、開いてみることにした。
「麗那へ
あなたがこのメールを開くのを待っていたよ。
ねぇ、あの日約束したよね?
ずっと友だちだって。…覚えてる?」
違和感が背筋を凍らせた。
確かに私の名前は《麗那》だ。
…けれど、あるはずがない。
送り主は………………もう、1ヶ月も前に亡くなっているのだから。
親友の《沙希》のアドレスで誰かがイタヅラをしているに決まっている。
…酷い嫌がらせだ。
私のメールボックスが空なのは、《沙希》との思い出のために携帯を買い換えたからだ。
切り替える前の携帯は、半永久的に私の何にも替えがたい宝物。
他のデータに紛れさせたくなくて、買い換えた。
…アドレスだけは一緒にコピーしていた。
彼女が使うことなんて二度とない、アドレス。
それでも、消せるはずがなかった。
メールの文面なんてありきたりだ。
でも、イタヅラにしては悪質としか思えない。
………私はこの時、信じずにイタヅラだと思い込んでいた。
亡くなったときの彼女の心中を知らなかったから。
メールを開いたのは必然的だったと思い知らされたのは、《沙希》が亡くなった丁度一年後の今日から一週間後だった。
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