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「…ちゃんと聞いて。」
目の前まできて歩みを止める。
彼は怯えたような目で、私と沙希を交互に見た。
「私はね。………"沙希以上に大切な人"はいないの。
喩え、あなたに告白されていたとしても、"断ってた"。
……それは気がついてたんじゃないかな?」
薄く微笑む。
……彼の表情は絶望しかない。
「……あなたは私の"一番大切な人"を奪った。だから、ね?」
私は更に笑みを深くした。
「"今ここで、アナタが一番欲しいものを奪ってあげる"。」
……私は隠し持っていたナイフを取りだし、自らの首を掻き切った。
『麗那………!!』
……………大好きな人の声が聞こえた。
私は待っていたのかもしれない。
彼女が迎えに来てくれることを望んでいたのかもしれない。
死んでいても、彼女に人を殺させたくなかった。
ただの私のワガママだよ、沙希。
これで、彼は"生き地獄"を"永遠"に味わう。
これが、私の"望み"で"復讐"だ。
………ああ、これでやっと"ずっと一緒"だね。
……サイレンの音が響く。
現場には、"山下くん"一人が残されていた。
"少女の死体"と共に。
警察と一緒にパトカーから降りてきたのは、"香菜ちゃん"だった。
不審に思い、交番に駆け込んだのだろう。
しかし、一足遅かった。
…"麗那"は自殺していたから。
ずっと香菜は心配していた。
沙希が亡くなってから、ずっと。
けれど、沙希を介してアドレス交換をしただけだった。
丁度一年前に亡くなった《沙希》。
丁度一年後にメールしてきた《麗那》。
不安にならないはずがない。
まさか、こんなことになるなんて…。
二人が本当に仲が良いのは知っていた。
きっと…離れ離れが辛かったんだと思う。
……でも、誰もこんな結末は望んでいなかったはずだ。
………気がついた《山下くん》が全てを自供し、真相が明るみになった。
しかし、《沙希》の幽霊を見たことは誰も信用しなかった。
………信じたのは《香菜ちゃん》だけだった。
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