0人が本棚に入れています
本棚に追加
「……!」
眼前に幼子ほどの大きさの岩。
避ける間も庇う間もなく、勢いのまま頭を打ち付ける。
一際大きな衝撃。
視界に火花が散る。
痛みはあったのだろうか。
よくわからない。
意識が遠くなる。
手に持つ刀の感触だけは、妙にはっきりとしていた。
体が宙を舞った気がした。
いや、確かに宙を舞っている。
いや、落ちている。
よくわからない。
目に映る茶色く濁った川。
流速は速く、流量も多い。
ここしばらくの雨で増水しているのだろう。
のんきにそんなことを考えた。
凄まじい速度で目に映る川が大きくなっていく。
視界いっぱいに広がる濁流。
全速力の馬に撥ね飛ばされる錯覚。
彼の意識は、そこで途切れた。
最初のコメントを投稿しよう!