序章

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「……!」 眼前に幼子ほどの大きさの岩。 避ける間も庇う間もなく、勢いのまま頭を打ち付ける。 一際大きな衝撃。 視界に火花が散る。 痛みはあったのだろうか。 よくわからない。 意識が遠くなる。 手に持つ刀の感触だけは、妙にはっきりとしていた。 体が宙を舞った気がした。 いや、確かに宙を舞っている。 いや、落ちている。 よくわからない。 目に映る茶色く濁った川。 流速は速く、流量も多い。 ここしばらくの雨で増水しているのだろう。 のんきにそんなことを考えた。 凄まじい速度で目に映る川が大きくなっていく。 視界いっぱいに広がる濁流。 全速力の馬に撥ね飛ばされる錯覚。 彼の意識は、そこで途切れた。
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