青天の霹靂

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見渡す限り、雲ひとつない晴れだった。 連日の雨も昨日の夕方に上がり、空は青く澄み渡っている。 絶好の洗濯日和である。 静(しず)は衣類で山盛りになった籠を抱え、緩やかな山道を登っていた。 空を見る限り、今日一日は天気は保つだろう。 この時期、晴れの日は貴重だった。 晴れたときにしかできない仕事というものがある。 彼女の今日の仕事は洗濯だった。 夫婦二人暮らしとはいえ、一週間分の洗濯物は相当な量だ。 大した距離ではないが、これだけの荷物を持って歩くのは老体に些か堪える。 それでも、静は清々しい気分に浸りながらのんびりと歩を進めていた。 生きるうえで水という存在は欠かすことができない。 雨が必要なことは理解している。 それでも、やはり晴れというものは気持ちがいい。 ちなみに、三十余年連れ添っている夫の仕事は山で柴刈りだ。 薪の備蓄はあるが、雨季を乗りきるには心許ない量だった。
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