序章

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接近した勢いのまま男の体を蹴り、強引に刀を抜く。 仰向けに倒れ、痙攣した男は間も無く事切れた。 恐らく、今ので最後。 ようやく辿り着いた。 誂えたかのように開けた場所。 どこかの山の中腹。名前は忘れた。 麓から、人を斬りながら登ってきた。 体力は既に限界だった。 しかし、ここからが本番だ。 今までのは前哨戦に過ぎない。 顔を上げる。 地面から生えた大きな岩。 その上に腰を下ろす大男。 雨が上がったにも関わらず、未だに編み笠を被っている。 その男は先程から微動だにせず眺めていた。 残忍に斬り殺していく彼を。 無惨に散っていく手下達を。 「降りてこい!」 腹の底から叫ぶ。彼のその声音は怒りに満ちていた。
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