序章

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衝撃。 頭から吹き飛ぶ。 二、三度転がり、離れた位置で体勢を立て直す。 外側に振り上げられた『鬼』の左腕。 殴ったのは利き腕でなく、防具すらつけていない拳の甲。 それも腕の力だけで。 それでも、槌で思い切り殴られたような衝撃が頭の芯を貫いた。 頭のふらつきを我慢し、彼は正眼に構える。 足にも影響がある。 構えを取るのがやっとだった。 好機にも関わらず、『鬼』は仕掛けてこない。 「……弱いな」 『鬼』が呟く。 「肉体的にも精神的にも、まだまだ未熟」 「黙れッ!」 「その上、憤怒にただ身を任すなど笑止千万! 恥を知れ!」 「説教を聞く気はない!」 震える足に喝を入れ、『鬼』へと駆け出す。
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