序章

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両手で引き剥がそうとしても、宙に浮いた足で蹴りつけても、『鬼』は意に介さない。 徐々に圧を増していく『鬼』の屈強な手。 「ああああ!」 割れそうな頭の痛みに絶叫する。 『鬼』が刀を投げ捨てる。 それだけが辛うじて見えた。 「お前には失望した」 頭蓋を握り潰される直前、激しく揺さぶられ体が宙を舞う。 投げ飛ばされたことに、数瞬の後に気付いた。 地面に叩きつけられた痛みより、『鬼』の手から解放された安堵感の方が大きかった。 刀の捨てられた方向に、一瞬目をやる。 刀は、運良く下り斜面のほんの手前で止まっていた。 斜面の先には崖が、その下には川が流れている。 刀無しに挑むのは無理だ。 どうしても刀が必要だった。 懐から投擲用の小刀を取り出し『鬼』へと投げ、同時に駆け出す。 見届けることはしていない。 成果は期待していなかった。
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