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第1章
暗闇の中、私はうっすら目を覚ます。
メールの着信を知らせるチャイムが頭の上で小さく鳴った気がした。
んん、と目をこすりながらノートPCの蓋を開ける。
「ん。・・・・・・なんだよ、眩しっ」カレシが布団の中で寝返りを打つ。
「ごめん、ちょっとメール確認するだけ」
いい加減にしとけよ、と鼻で長いため息をつきながらカレシはまた眠りの世界へ潜っていく。
わかっている。
気にしすぎる性格だという自覚はある。ただ、わかってはいても、自分へのメッセージは間を置かずに確認しなければ落ち着かない。
臆病なのだ、とこの前カレシには言われた。
確かに。
でも、自分への連絡を知らせる音は、夜中に突然自宅の玄関扉が開かれる音を聞くのに似ている。変な想像が膨らむ前に明かりをつけて確認したい。
もしかしたらマネージャーからかもしれないと頭を仕事に切り替えながら、PC上でアップダウンしながら主張するメールアイコンをクリックする。
一昨日の案件の竣工がちょうど今頃かもしれない。向こうの時刻ではちょうどお昼ぐらいだろうか。
私のミスの件でなければいいけど。
「無題?」
メールの本文がポップアップされる。
画面を見て思考が止まった。
目をこする。
今度は、よりハッキリと見えた。
満面の笑みを浮かべる幼い女の子の荒い画像がディスプレイの真ん中に表示されている。10歳くらい。おかっぱで、前歯がまだ生えそろっていなくて、青い服。
この子、どこかで見たことがある。まだ上手く頭が眠りの淵から戻りきっていない。
『ダウンロードが完了しました』の表示の後に添付されていたのであろうボイスデータが再生された。
「「大好きなミナコちゃんへ」」
途端に顔全体が泡立った。
・・・タスケテ・・・
背筋から首にかけてがガチッと硬くなり、息が苦しくなる。
「「早く良くなって、また遊ぼうね」」
少女の気遣いのこもった優しい声が、私の胃を大きく揺さぶった。
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