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「ハル!?」
電話の相手の動揺具合がすぐにわかった。自分よりもさらに動揺している声を聞いて私は少しだけ落ち着きを取り戻す。
「助けて!」
「落ち着いて。大丈夫よ、ハル。何があったの?」
カレシに促されて私はベッドに座りなおしてから幼馴染に声をかけた。
私とハルは、7年前同じプライマリースクールに通って居た同学年生で、かつ同時期に同じ病で同じ病室での入院生活を経験した同室の友だった。
性格は全く違い決して仲が良かったわけではないが、学校が廃校になった後も、たまに会う付き合いは続けていた。
やっぱり、あんたも?なんなの?やっぱり資料館のあれのせいなの?もうイヤ!!!とハルの取り乱し用は尋常ではなかった。
おかげで私はすっかり冷静になれた。
「誰なの、こんな嫌がらせするの!」
「落ち着いて。わからないよ、私も。明日確認してみようよ」
「いやだ、気持ち悪いのよ!だってみんなの声聞いちゃったんだもん、みんなの声、私にひきょうだ、うらぎりだって、あの頃のままの声で、ひくっ、ひどいよ、別に逃げたわけじゃないのに、タスカルナンテズルイヨ、たまたまそこに居なかっただけなのに、寒いよ、寒い、あ」
ハルの声が突然途絶えた。
え、どうしたの?ねえ、と私が呼びかけるが受話器の先がぽっかり暗闇に飲まれてしまったかのようになんの音も聞こえない。
不意に腰の位置でメールの着信を告げるチャイムが鳴った。
硬直した首を回してディスプレイを見下ろす。
自動的に写真がポップアップされ、私とカレシはそれを見た。
「やばい、なんだ、これ」
カレシにはわからなかった。これが、ハルの自慢の髪の毛だということを。
私にはわかった。首が完全に反対を向いているので顔は見えないが、この色と長さと髪質は、間違いなく彼女のものだ。
「気持ち悪っ、なんのいたずらだ」カレシが顔をしかめながら画面に近づこうしたので、カレシ共々勢い余ってベッドから転げ落ちそうになるくらい肩を掴んで必死に引き離した。私のただ事ではない様子を見て、カレシの顔も険しく変わる。
メーラーが自動的に手順を進める。
ダウンロードが完了しました、と表示がされ、ボイスデータが再生される。
「皆んなと一緒じゃないのは、だ????レダ」
その次の瞬間、いきなり画面が暗転し、真っ暗になった。
カレシの息遣いが耳に当たる。
息がやけに冷たかった。
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