平穏が消える日

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だが、その奇妙な現象は世界中で徐々に徐々にと広がっている....。 極度なストレスによる影響であるとか、新手のウィルスが原因だとか、色々な説が囁かれてはいるが、本当の所は誰にも分からない。 その証拠に、世界中のどの国も何の対策も出来ていないのだから――。 まあ、当然であろう。 どんな状況や条件で、殺人鬼に変わるのか分からないのだ。 対処のしようもあるまい。 (しかしまぁ、吸血鬼ウィルスとかが原因なんて、ベタなオチじゃないよな、これ?) 人の血を吸う為に、人を襲うのだから....それはある意味、吸血鬼と言えるのではないだろうか? もっとも、昼間でも普通に殺人鬼化はするし、拳銃で普通に撃ち殺せるんだから、一般的な吸血鬼ってヤツのイメージとは明らかに異なるが....。 更に言えば、生き返ってくる訳でもないから不死身って訳でもない。 つまり、普通に人間って事だ。 まぁ、俺が考えるに恐らく、狂犬病的なものなのだろうと思う。 だが一番の問題は、いつか日本にもその状況が起こり得ると言う事だ。 もし、知り合いや友達の誰かがそうなったら、俺はどうしたら良いのだろうか? 何より....家族の誰かが、そうなったら俺は....。 (たく....冗談じゃないよな本当に――。 もう....誰かを、失うのは御免だよ。 さっさと、解決してくれればいいのにな....。) 俺は、不意にそんな事を思った。 確かに、こんな恥ずかしい思いを続ける事は御免だが、一番嫌なのは日常が壊れる事である。 父さんが突然、死んだ時みたいに....。 だから俺は、今の日常が壊れる事を一番怖れていた。 後....どのぐらい、こうしていられるのだろうか? 俺は、父さんが死んだ時から時折、そんな事を考えてしまう。 なるべく、考えないようにしようとは思ってはいるが最近、多発しているキラー・ブラッド症候群による事件が俺に、それをさせてはくれない。 何故なら、それは余りにも残酷で絶望的なシロモノだからだ。 キラー・ブラッドで、殺人鬼化したものを治す術はない。 つまり、それが意味するものとは、キラー・ブラッド発症者を止めるには、殺す以外の選択肢が無いと言う事――。 その事実に直結しているのだ。
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