44人が本棚に入れています
本棚に追加
/191ページ
(まぁ何であれ、今の日常が壊れなきゃ....別にいいんだけどな....。)
そう....これ以上、悪くならないのなら、それでいいのである。
そう....父さんが死んだ時から家族の中で、何かが壊れてしまったのだから、この状況は仕方がない。
父さんを失って分かった事だが、重い苦しみを抱えてるヤツは、自分を維持する為に歪む。
俺然り、美沙子姉さん然り。
妹の小夏がガサツになったのも、その頃からだった。
母さんも笑いはするが、父さんが死んでから心から笑っている所を、見ていない。
母さんの場合、笑顔とは裏腹に、目が悲しみに満ちているのだ。
多分、悲しみを抱え込んでいるが故に、笑うように意識して、悲しみから目を背けるように努めているのだろう。
そう........父さんは、それぐらい家族にとって、大切な存在だったのである。
だから....理不尽な理由で、もう何かを失うのは正直、御免だった。
もう....二度と、そんな事になって欲しくない....。
それは、俺の切なる願いだったのである。
「おーい、優兄~?
ボーとしてると、学校遅刻するよ?」
「えっ!?
マジでか!???」
俺が慌てて、テレビの時間を確認すると時計は、午前八時二十分を過ぎていた。
学校へは、ここから走って二十分程....。
出席確認が、午前八時四十五分。
つまり、走らなければ遅刻確定である。
「やっべ!
遅刻だ!!」
俺はハムサンドをくわえたまま、慌てて家から飛び出した。
「優兄~そうしてると、何かお魚くわえた何とか、みたいだよね?」
「俺は泥棒ネコの類いか!?」
俺は残ったハムサンドを一旦、口から右手へと移しつつ、小夏の一言に反論する。
だが....良く考えて見れば、そんな反論などしている暇など無い事に、俺は気付いた。
口を動かすより、先ずは足を動かさなければ本当に遅刻してしまう。
何より最悪な事に今日の、うちのクラスの担当教師は、よりにもよって松村だ。
最初のコメントを投稿しよう!