平穏が消える日

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うちの高校は、ローテション式担任制度が導入されている。 ローテション式担任制度と言うのは、週ごとに担任の先生を交代すると言う、ちょっと変わった制度の事なのだが、そんな制度が導入されているのには、幾つかの理由があった。 1つには、担任の交代により教師と、生徒の間に生じる飽きや、慣れの気持ちを軽減する為。 2つには、教師並びに生徒に適度な緊張感をもたらす為。 そんな理由だ。 何故、そんな事をするのかと言えば緊張感を維持する事により、集中して授業を受けれる環境を継続させる為――。 ――だ、そうである。 そして、この制度が試験的に導入されたのが、今から一年前....。 そんな奇妙な制度が導入されたお陰で、今週は松村が担任などと言う、人災が稀にやってくる訳だ。 松村貴志【マツムラ・タカシ】....。 ヤツは、その名前とは裏腹の禿、偏屈、変態の三つのH要素で構成された、KY【キモくてヤバイ】教師である。 その猿ぽい見た目から、全校生徒より侮蔑の意味を込めて、エテ公のアダ名で呼ばれているのだが、ヤツを嫌っているのは生徒に限った事ではない。 教師にも、ヤツを嫌っている者は大勢居る。 何故か? その理由は至って単純。 誰もマトモに口出し出来ない事を、良い事にヤりたい放題してるからである。 そして何故、誰も口出しが出来ないのかと言えばヤツが、政治に影響力のある大企業の社長――。 その次男坊故にである。 つまり、ゴタゴタのもみ消しは勿論の事、学校の人事など、サラッとやってのけるだけの影響力が、このクズ野郎にはある訳だ。 それでいて、性格もすこぶる悪い。  本当に質が悪い輩なのである、松村と言う男は――。 以前、俺が遅刻した時は廊下に一時間、立たされた挙げ句、今までの人生で恥ずかしいと感じた経験を、原稿用紙五枚書けと言われ、それが終わるとトドメとばかりに、校長の銅像をピカピカになるまで、磨かされた。
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