平穏が消える日

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「しかし、平和だな....。」 俺は思わず呟く。 全く、松村一人居ないだけで、こんなに平和だと感じるって事はつまり。 学校の平和を乱しているのは、松村であると言う確たる証拠である。 だが、そんな平和も間も無く、終わってしまう。 何故なら、間も無く松村が学校に来るからだ。 「やれやれ、暴君のお到着だな鈴原?」 長岡が窓を見ながら、うんざりした表情で俺に、そう告げる。 俺も長岡に応じ、「全くだ....。」と言葉を返した。 ――今日一日ぐらい休みやがれ!―― それが俺と、恐らくは長岡の心境に違いあるまい。 何せ、俺も松村の事を嫌っているが、長岡もまた、口調こそ軽いが俺と同等....或いは、それ以上に松村の事を嫌っているのだから。 理由は、長岡の好きな女子にセクハラしたからである。 いや....実際の所、一歩間違えばセクハラどころの話ではなかったらしい。 長岡の話だと、服を脱がそうとしていたらしいのだ。 たまたま、長岡がその場を通りかかったからこそ未遂で済んだが、誰も通りかからなかったら、未遂では済まなかっただろう。 だから....長岡は、松村を嫌っているどころか、憎んですらいる。 だが、俺には長岡の気持ちが少しだけ分かった。 もし妹の小夏が、そんな目に合わされたなら、恐らく俺は松村を殺してやりたいと思うだろう。 しかし、昼飯時に来るとはお気楽なものだ。 俺は松村のそんな腹立たしい出勤姿勢を、見据える。 だが、その時だった。 不意に一人の女子生徒が、松村の元へと向かっていく姿が、俺の瞳に移り込む。 (・・・・・・誰だ、あの娘は?) 俺は、見覚えの無い顔の女子の出現に思わず首を傾げる。 その直後、長岡がボソリと呟いた。 「あの娘....確か、松村にセクハラされた娘だ。 確か、その事が原因で暫く、学校休んでた筈だけどな....?」 「へー....彼女が、そうなんだ。」 俺は長岡の呟きに、呟きで答える。 だが、その直後....長岡が不意に言う。 「なあ....鈴原、下に様子を見に行って見ないか?」 「おぃおぃ、お前....そこまで、デバガメだったか?」 「まぁな....。 あの糞野郎の事に関しちゃ、何だってやってやるさ....。」 「なるほどな....。」 俺は長岡の言葉に、素っ気ない返答を返した。 しかし――。
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