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「何すんだよ長岡、右手を放せ。
アイツをとことん、ぶん殴って泣いて謝らせてやる!」
「気持ちは分かるが、少し落ち着け鈴原....。」
「何で止めるんだよ長岡!?
お前だって殴ってやりたいだろ!??」
「あぁ....俺も殴り倒してやりたいさ....。
でもな....何か、様子が可笑しいんだよ――。」
「どう言う事だ長岡....?」
俺は長岡の言葉の意味が、理解出来ず思わず、問いかけた。
長岡の表情には、妙な緊張感が漂っている。
そんな長岡の妙な緊張感にあてられたせいか、自身の内側に燻る熱が急に引くのを感じ、俺は何とか落ち着きを取り戻した。
長岡は、俺が落ち着きを取り戻したのを確認すると、緊張した面持ちで言う。
「なぁ、鈴原....何か佐山、可笑しくないか?」
「えっ....?
可笑しいのって、松村じゃなくて....佐山の方なのかよ?
でも、変な所なんて特に無いように思えるけどな....??」
「あぁ....今はな....。」
「今はって....少し前は、何かあったのかよ?」
長岡は、頷くと重々しく口を開いた。
「佐山ヤツ....さっき微笑んでたんだよ....。
こんな絶望的な状況なのに....。
お前が佐山の立場だったら、この局面で笑顔でなんかいられるか?
俺だったら絶対に無理だな…。」
「・・・・・佐山が、微笑んだって言うのかよ?
この状況で....??」
確かに、それは普通に考えて有り得ない話である。
普通、か弱い少女の心境としては、こんな絶望的な状況が目の前にあったら、泣き叫んだり、無理だと分かっていても懇願し続けるだろう。
だから、彼女の反応は明らかに可笑しかった。
(気でも触れたってのか?
それとも....?)
そして俺は、その答えは直ぐに知る事になる。
妙な緊張感が漂う中、突然....佐山恵が、口を開く。
「フフフ........松村先生、分かりました。
私、先生の言う事を聞いていれば安泰なんですね?」
「あ....あぁ、そうさ!
俺に従っていれば安泰だよ、恵~♪
漸く観念したな?」
「はい、松村先生。
私、観念しました。」
「そ、そうか....。
なら先ずは、その忠誠を示して貰おうかな、恵ちゃん♪」
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