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その直後、佐山恵の口内と顔面にぶちまけられたのは、松村の欲望の権化たる白い体液ではなく、危険を感じさせる赤い体液であった。
つまり....血液である。
それが佐山恵の全身へと降り注ぎ、佐山恵は松村のイチモツを、口内で弄びながら淫靡な笑みを浮かべた。
(喰い千切ったのか!?)
一分なりとも、その痛みが想像出来たが故に、俺と長岡は思わず顔をしかめる。
佐山恵はというと、松村の苦痛に歪んだ顔を見上げながら、松村のイチモツの傷口より血を啜っているようだ。
俺は、そんな佐山恵を見た瞬間、例えようもない恐怖と、寒さに襲われる。
俺にそう感じさせたのは、佐山恵の行為そのものではない。
俺に、そう感じさせたのは佐山恵の――。
血の様に赤くギラギラと輝く二つ瞳だ――。
(あれは....まさか........!?)
――【キラー・ブラッド症候群】――
その言葉が、俺の心を這いずり回る。
それと同時に、俺は理解した。
もう....俺が手離したくなかった平穏なる日々は、失われたのだと――。
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