残り火

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第一、鳥形は佐山・恵と接点が無い。 何故かと言うと、松村が睨みを利かせていたからである。 俺は佐山・恵に興味を持っていなかった為、詳しい状況は知らないが鳥形は、佐山から意図的に距離を取っていた。 興味がなかったのに何故、そんな事が分かるのかと言えば、答えは至ってシンプル。 鳥形が、佐山と一緒に居る所を見た事がなかったからである。 それは俺が無意識に、鳥形の事を警戒していたが故に、佐山の事を眼中に置いていなかった事が、原因なのだが....何であれ、鳥形と佐山には接点が無い事は確実だった。 いや....或いは、鳥形が外国で感染した何者かに、接触し感染した可能性も考えられるが、鳥形が感染を否定しているのだから恐らく、その可能性は無いのだろう。 だとしたら――何故、鳥形がキラー・ブラッドを発症する事になったのだろうか? 当然、それに対する答えなど出る筈もない。 だが、そんな時、鳥形が不意に口を開いた。 「その顔は状況が理解出来ていないってツラだな鈴原....? なら、教えておいてやるよ。 何かしらの要因でキラー・ブラッドが発症したから俺は、キラー・ブラッドになった訳じゃないんだぜ? キラー・ブラッドになりたいと強く望んだから、俺はキラー・ブラッドを発症させられたって訳だ。」 「何だって........? それは、一体どう言う事だ――!?」 「分かんないかな――? 俺は、佐山みたいになりたかったんだよ。 全く、震えたぜ....。 キラー・ブラッドを発症した佐山を見た時は――。 俺はずっと求めてたんだよ、この窮屈な環境を、ぶち壊せるだけの力をよ――? だから、俺もなりたかったんだよ....キラー・ブラッドによ――!」 (望んだからキラー・ブラッドを、発症しただって――!??) 俺は驚愕の表情のまま、鳥形の方を見据える。 それは余りにも、信じ難い残酷なる言葉だった。 何故なら、望むだけでキラー・ブラッドが発症すると言う事は、予防策が全く無いと言う事だからである。 いや....違う――。 重要なのは、そこではない。 重要なのは――・・・・・・・ 「嘘を言うな――! 全部、デタラメだ!!」 俺は、その言葉が受け入れられず思わず、叫んだ。 だが直後、鳥形が俺の言葉を否定する。 「ソイツは違うな――。 理屈は分からないが、誰しもがキラー・ブラッドになる要因を、持ってるんだぜ鈴原?」
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