残り火

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それは俺が最も、聞きたくなかった言葉だった――。 何故なら、それはつまり誰でもキラー・ブラッドを発症する要因が、あると言う事だからである。 それが事実なら、もう止められないとゆう事だ....。 悪夢に満ちた世界の変貌を――。 だが....それが事実であるとは限らない。 俺は、そうであって欲しいと思いたかったのである。 しかし――。 「さて、鈴原――此方は、お前の聞きたい事に、色々と答えてやったんだ。 そろそろ俺の方のお願いも、聞いてくれないかな? 早く、お前の血で助けてやってくれよ....委員長ちゃんをよ――。」 俺に考える暇を、与えない様にするかの如く、間髪入れずに鳥形が言った。 鬼気迫る表情でである。 それは鳥形にも、余裕が無いと言う事なのだろう。 鳥形の焦りの要因とは、ほぼ間違い無く柚森に残された命の時間だ。 だが、確かにキラー・ブラッドを発症していない柚森を、このまま見捨てるのも正直、心が痛む。 ただ、助けてやりたいのは山々ではあったが、俺には鳥形の言うように、俺の血で柚森を助けられるとの確信が、どうしても持てなかったのである。 それ故に1つ、どうしても確認しておく必要があった。 他の方法があるか、どうかの確認である。 「なぁ、鳥形....正直、俺には自分の血で柚森を助けれるとは、とても思えない。 お前の血じゃ、駄目なのか?」 「おいおい、勘弁してくれよ鈴原? さっき言ったように、キラー・ブラッドは感染症じゃない。 誰でも発症要因のあるシロモノなんだぜ? 俺の血をやって、運良くキラー・ブラッドを発症したなら、助かる見込みはあるが、発症しなかったら、このまま死んじまう....。 そんな一か八かの賭けなんぞ、お前だって、やりたくはないだろう? それに、そもそも自分で何とか出来るなら、お前を頼ったりしないぜ、俺は――?」 確かに正論である。 ただし、それは俺の血で柚森を助けれると言う部分を、除けばの話だ。 そもそも鳥形は何故、俺の血に固執するのだろうか? 何故――?
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