追憶

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鳥形の言葉は、俺の心を大きく揺さぶった。 何故なら、俺には鳥形の言葉に、思い当たる節があったからである。 それとは、過去の記憶の空白部分――。 俺の記憶から、削げ落ちた....忘却している何かである。 だからこそ、俺は鳥形の言葉を単なる戯れ言と、聞き流す事が出来ずにいたのだ。 (鳥形は俺の記憶の空白部分....。 その何かを、知っている――?) それは、俺が気にしないように、努めてきた忘却の記憶――。 気になってはいたが、考えないようにしていた事柄....。 「お前は、何を知っているんだ鳥形!?」 「そうだな....。 少なくとも、お前が、普通じゃないって事ぐらいは、知ってるぜ。 それより早く、委員長ちゃんに血を飲ませてあげてくれないか――? 委員長ちゃん死んじゃったら、お前でも殺すぜ鈴原――?」 「....分かった。 それより柚森に、血を飲ませたら、お前の知っている事は教えてもらうからな!?」 「あぁ、いいぜ――。 俺もお前には、本当の自分を知って欲しいと思っているからな?」 今の俺には鳥形の、その言葉を信じるしかなかった。 そして、俺は柚森・静の元へと近付く。 「カッター持ってるか、鳥形?」 「必要無いだろ、そんなもん?」 鳥形は、そう言いながら、俺の右腕を人指し指で軽くなぞる――。 直後であった。 俺の右腕に熱気を感じたのは――。 そして....右腕から、深紅のか細い液体が滴り落ちる。 「俺の血を飲ませたら、どうなるかは分からないが、俺は柚森の事を保証出来ないからな?」 「安心しろ委員長ちゃんの事は、俺が保証してやるからよ――。」 「分かった....。」 俺は鳥形の言葉を信じ、柚森の口元に右腕から流れ落ちる、血液を流し込む。 ほんの数滴の血液――。 不可思議な事に、俺の右腕から流れ落ちる血液は、その....ほんの数滴、柚森の口に入り込んだ直後、不意にその流れをと切らせる....。 何故――? その状況を不思議に感じた俺は、慌てて右腕を確認した。 しかし、奇妙な事だが、俺の右腕にある筈の傷が無い。 あるのは血液の流れ落ちた形跡のみである。
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