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電車が次の停車駅に着き、乗車口から大量の人と共に外に掃き出された。
カズマさんにほとんど抱え上げられながら、何とか動こうと試みるけれど全く力が入らなかった。
私、何飲まされた?
身体の中を良くないものが巡っている気がして怖い。
このままどうなってしまうのかわからなくて怖い。
プラットホームの中ほどまで行き着いた時、
「あおい!」
人波の中を一陣の風が駆け抜け、ホームの屋根に飛び上がった塊が上から降って来て、背後のカズマさんを蹴り倒した。
「…ハワイじゃ、…」
ホームに倒れ込んだカズマさんが何か言う隙もなく、
「あおいに手出したら殺すから」
柚くんの声が聞こえたような気がした。
「アンドラーシ、確保!」
「犯人確保です! 下がって!」
「すみません、下がってください」
数人の男性たちが物々しい勢いでやって来てカズマさんを取り囲み、
「何? 撮影?」
「事件?」
居合わせた人々の悲鳴や大声が飛び交ってホームが騒然とする。
身体に力が入らず横座りになっていた私は、
「あおい…っ!」
一瞬の後に、苦しいくらい強く柚くんの腕の中に閉じ込められた。
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