second.21

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「ごめん、あおい。ごめん、…!」 柚くんの匂い。 柚くんの声。 柚くんの心臓の音。 壊れそうなくらい早く柚くんの心臓が動いている。 私を抱きしめる柚くんの腕が震えている。 何がどうなったのか、全然わからない。 でも、思ってたことがある。 柚くんに会えたら。今度会えたら。 伝えたい。 何か飲まされて、身体の自由が利かなくなって、 このまま柚くんに会えなくなるかもしれないと思ったら怖かった。 もう伝えられないかもしれないって。 今まで、ちゃんと伝えてなかった。 あの日も、黙って出てきてしまった。 本当は一番に伝えたかったのに。 「(柚くん)、…」 声は出ないけど、涙がこぼれた。 柚くんがすごく辛そうな顔をして、私の頬を長い指でたどった。 綺麗な瞳に影を落として、あんまり辛そうに私を見るから胸が痛くなる。 柚くんを抱きしめたいのに、腕が動かない。 「(柚くん、大好き)…」 声が出ない。涙しか出ない。 柚くんの綺麗な瞳が私を映して揺れている。 「(大好き)…」 「…うん」 柚くんが、キスしてくれた。 優しく柔らかく甘く愛おしむように。 すごく安心して、急速に意識が遠のいた。
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