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「実は私、このような者です」
私の心の声が聞こえたわけではないだろうけど、
パイプ椅子に座り直した氷室さんがスーツの胸ポケットから取り出して見せてくれたのは、警察手帳と思しきものだった。
…は?
いや。そんなの初めて見るし。
っていうか、…え?
警察? え? 警察??
「橘さんには危険な目に遭わせてしまったばかりか、数々の不快な発言や状況、心よりお詫びいたします」
警察手帳をポケットにしまった氷室さんが再びきっちりと頭を下げた。
「私は今回、藤倉グループの内部争いに関して潜入捜査を命じられておりまして、アンドラーシの属する組織の実態調査と組織と繋がっている藤倉一族の首謀者を突き止めることを目的に動いていました」
えー、…
なんかもう、頭がついていかないというか。
予想外過ぎてよく分からないというか。
言われてみれば、氷室さんて冷静で知的で真面目な階層組織の一員のようにも見えるけど。
『個人的な感情よりも社会的な責任を重んじるのが大人というものではありませんか』
そういうこと―――?
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