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 次に目を覚ますと、ちょうど試合が終盤に差し掛かる時刻だった。  急いで着替えてから、グラウンドに向かうと、寮生はほとんど来ているのか全く試合の様子が見れない。  それほど、人で溢れかえっていた。  人ごみの一番後ろに立つが、前に進める気配は全くない。  「…ひろ?めずらしいね。人が集まるところに来るなんて」  聞き慣れた声が隣から聞こえ、振り向くと、碧が驚いた顔をして立っていた。  「そっちこそ」  「俺はきりにむりやり連れてこられた…」  そう言われて周りを見ると、すぐ後ろに桐斗がにやけた顔で俺を見下ろしていた。  「加住の応援か、大翔」  それだけで俺をからかっているのは明白で、若干ふてくされながら 「…違う」 と一言だけ返した。  「ま、理由はどうでもいいけど、サッカー部をさけてたお前がこんなところに来るってことは、この試合絶対見たいんだろ?…来い」  不意に桐斗が俺の腕をつかみ、人ごみの中を歩いていく。  俺1人じゃ一番前まで出られないことを察してくれたんだと理解して少し嬉しくなった。  にやけてしまいそうになるのを必死にこらえていると、もう早試合が観戦できるところまで、連れてきてくれた。  「じゃ、俺は碧が帰りたそうな顔してたから帰るわ。じゃな」  一度だけ、俺の頭を撫でてから、桐斗は人ごみの中に消えて行った。  それを確認してから、俺は大歓声に包まれているグラウンドに顔を向けた。  きっと藤城とあの時のような白熱した試合を繰り広げているんだと想像しながら。
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