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 「…分かった。気付かせてくれてありがと。でも、やっぱり直接言う、なんてできない」  「それなら、名草さんと話してきたら、どうですか?ここに来る途中、非常階段に座ってましたよ」  小さく頷いてから、顔は見ずに部屋を出る。  きっと、顔を見たら碧とも話せなくなってしまうから…。  非常階段までの長い廊下をゆっくり歩く。  心のどこかで、もういませんようにと願う自分をおしこめながら…。  途中、碧と桐斗の部屋の前を通る。すると、中から隣の部屋から苦情が来そうなくらいの大音量で音楽が流れてきた。  碧は、昔から花火みたいな大きい音が苦手だった。  てことは、今碧は部屋にはいない。  …やっぱり、気持ちに決着をつけなければダメなんだ…。  加住は、俺のために嘘をついてまで、心の奥の本当の気持ちに気付かせてくれたんだから…。  非常階段に続くドアを開けると、1階におりる方の1番上の所に、碧は座っていた。  いきなり開いたドアに驚くこともなく、ただまっすぐ前を見ながら。  「…来ると思った」  「…何で?」  少しだけ顔をこっちに向けた碧の表情はいつも通りのどこか気だるげなものだった。
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