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目を見て、力強い言葉で、声でそう告げる。
俺は頷くこともできず、桐斗の目を見つめ返すことしかできない。
「大翔の事、大切な親友だと思うからこそ、俺じゃだめなんだ…」
徐々に小さくなる声とともに、桐斗が顔を背けていく。
その後ろで碧が立ち上がり、目の前まで回ってくる。
2段下から、俺の顔を覗き込んでくる碧は少し口を歪めていた。
「ずっと、一緒にいたから、きりはひろの本当の性格も全部わかってるんだよ。だから、きりじゃ、だめなんだよ」
必死に、俺を説得しようと碧は、頑張っている。
普段は、こんなにしゃべる方じゃないのに…。
俺が、桐斗の事、好きだと気付いてしまったから…?
止めようとしても、どんどん溢れてくる涙は、階段に少しずつ落ちていく。
本当は、泣きたくないのに…。
2人にもう、迷惑かけたくないのに…!
そう思えば思うほど、負の感情は高まっていく。
声を上げて、泣きじゃくっていると、目の前から鼻をすする音が聞こえてくる。
「ごめん、ごめんね…ひろ。ごめん…」
同じ言葉を何回も繰り返しながら、碧が泣いている。
下を見ると、階段は涙の後でいっぱいになっていた。
「違う。碧は何も悪くない…!俺が、意地はって、気持ちを押し殺してたから。碧が謝る必要なんて、ないんだよ…っ」
同じところまで降りて、必死に抱きしめるが、肩ですぐ分かる。
それでもかまわず、もっと強く抱きしめていると、ふいに桐斗が俺たち2人を抱きしめてくる。
さすがに、桐斗は泣いてはいなかったけど、その腕は少し震えていた。
どちらかの涙がおさまるまで、3人でずっとごめんを繰り返していた…。
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