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 あの時の痛みや、気持ちが全部こみあげてくる。  立っていることもできず、その場にしゃがみ込んだ。  息もできなくなって、胸をおさえながらも、流れるのは嫌なキオク。  背後から俺の背中を撫でようとしてくれたであろう碧の手さえ、怖くなって払いのける。  心に余裕がなくなって、2人に酷い言葉を投げかけてしまいそうになる。  体の不調は全部、気付かないふりをして、俺はドアを開け、長い廊下を走る。  いろんなところが痛くて、何度もよろけながら、どこへ向うでもなくすべてを忘れられるように全力で走った。  やがてたどり着いた場所は、寮の裏側の全く人が通らない場所だった。  外に出てくると、自然の清らかな空気のおかげで少し落ち着くことができた。  深呼吸を2回して、壁に体を預けた。  「お願いだから、あの人とだけは合わせないで…」  フラグにもなりそうな言葉を宙に吐き捨てる。  答えのない願いは、誰に届くでもなく消えていく…。かと思ったその時、右側から言葉が返ってくる。  「それって、もしかしなくても、俺の事?」  どこか俺を嘲笑うような低い声は、大嫌いなあの人のものと重なっていく。  少しずつ振り向いて、そこにいたのはやはり先輩だった。  「久しぶり。今、サッカーの試合やってるけど、お前はでないの。ここにいるってことはやめたの?」  「あんたが原因ですけどね」  目もあわさずに、会話をする。  一刻も早くここから逃げたくて、先輩には気付かれないように少しずつ距離を取っていく。  相手の内を探るような、そんな会話を繰り広げている中、逃げ切るのには十分な距離、離れることができた俺は、話しているのを無視してそこから走り去った。  後ろから、先輩が追いかけてくる気配はなく、ある程度離れたところで、その場にしゃがみ込んだ。  何で今、先輩と会うんだろう…。  カミサマ、俺はあとどれだけ苦しめばいいんですか?  いるはずもない誰かに言ったところで、何かが変わるわけじゃない。  結局は自分が決める事だから。  加住のことも、そして先輩と向き合うのかどうかも…。  それでも、すぐに答えが出るわけじゃない。  この2つはこの先の自分にまで関わってくるかもしれないから。そんな簡単に決めたりはしない。
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