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先輩を避け続けてから、1時間。
完全に逃げ切りたいなら、自分の部屋に閉じこもればいいだけの話だけど、それじゃ逃げることになってしまうから。
どんな結果になろうが、目を背けてはいけない。
覚悟を決めて、顔を上げ前を向く。
もう一度、裏庭に戻ってきたのはいいけど、当たり前だけどここに先輩がいるはずもなく、緊張をほぐすため深く息を吸い込む。
ここで待っていた方がいいか、それとも探しに言った方がいいのか悩む。
すぐに、先輩はまたここに戻ってくような気がして、動きかけていた足を止める。
「…大翔」
今にも消えてしまいそうなくらいか細い声で、誰かが俺の名を呼ぶ。
「…?え…、先輩…?」
そこには、さっきまでとは打って変わって項垂れる先輩がいた。
「…悪かった。昔、俺はお前に酷いことをした。にもかかわらず、俺はお前に謝ることもせずに、またお前をからかって…。本当に悪いと思ってる。許してほしいなんて思わない。お前の気が済むまで殴ってくれ」
先輩はそう言いながら、深く頭を下げる。
想像していなかった展開に、頭がついていけず混乱する。
何で、先輩の方から謝るんだろう…。
いや、それが本来なら正しいんだけど。
いきなり、どうして…。あ、もしかして…。
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