4.

6/9
前へ
/28ページ
次へ
 先輩を避け続けてから、1時間。  完全に逃げ切りたいなら、自分の部屋に閉じこもればいいだけの話だけど、それじゃ逃げることになってしまうから。  どんな結果になろうが、目を背けてはいけない。  覚悟を決めて、顔を上げ前を向く。  もう一度、裏庭に戻ってきたのはいいけど、当たり前だけどここに先輩がいるはずもなく、緊張をほぐすため深く息を吸い込む。  ここで待っていた方がいいか、それとも探しに言った方がいいのか悩む。  すぐに、先輩はまたここに戻ってくような気がして、動きかけていた足を止める。  「…大翔」  今にも消えてしまいそうなくらいか細い声で、誰かが俺の名を呼ぶ。  「…?え…、先輩…?」  そこには、さっきまでとは打って変わって項垂れる先輩がいた。  「…悪かった。昔、俺はお前に酷いことをした。にもかかわらず、俺はお前に謝ることもせずに、またお前をからかって…。本当に悪いと思ってる。許してほしいなんて思わない。お前の気が済むまで殴ってくれ」  先輩はそう言いながら、深く頭を下げる。  想像していなかった展開に、頭がついていけず混乱する。  何で、先輩の方から謝るんだろう…。  いや、それが本来なら正しいんだけど。  いきなり、どうして…。あ、もしかして…。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加